どうも、サッカー審判のリョウスケです。
今日は、サッカーの疲労について、科学的に正直な話をします。
この記事は審判だけじゃなくて、プレーヤーも対象です。というのも、サッカーというスポーツは選手と審判の疲労メカニズムがほぼ同じだから。
- 1試合10km前後走る(プロサッカー選手の平均、多い選手は12〜13km)
- スプリント(24km/h以上の全力疾走)を何十回も繰り返す
- そして走りながら常に判断し続ける
この構造は、選手も審判も変わりません。だから、後半30分以降にみんな失速するのにも共通の理由があります。
ネットで「疲労回復」を調べると「乳酸が疲労物質です」とか「○○で疲労物質が除去できます」って書いてある記事ばっかりで、実はほとんどが古い or 盛った話なんですよね。
この記事では、
- 疲労の正体って、実はまだ完全にわかっていない話
- それでも「末梢性」と「中枢性」の2つに分けると対策が打てる話
- なぜサッカーは脚より先に脳が限界を迎えるのか
この3つを、最新の研究を踏まえて整理します。
物販的な話はしません。まずは「敵を知る」ところから。
1. 「疲労」の正体は、実はまだよくわかっていない
いきなり逆張りみたいで恐縮ですが、これが現在の科学の正直な姿です。
よくあるブログで「疲労物質は乳酸です」「これが疲労の原因です」と断言しているものがありますが、実は「疲労はこの物質のせい」と断定できる単一の物質は特定されていません。
「乳酸=疲労物質」説は、すでに否定されている
カエルの筋肉を使った1929年のHillらの研究以来、長く「乳酸が疲労物質」と信じられてきました。
でも2001年のNielsenらの研究以降、これは覆されています。むしろ最近は、乳酸自体は筋疲労を防ぐ方向に働く可能性すら指摘されているくらいです。
現在の有力仮説は「複数併存」の状態
現在、筋疲労のメカニズムとして有力視されているのは、ざっくりこんな感じです。
- 末梢性:エネルギー枯渇説(ATP・グリコーゲンが尽きて収縮力が落ちる)
- 末梢性:カリウムイオン蓄積説(細胞外K+が神経の伝達を阻害)
- 末梢性:無機リン酸・Ca²⁺結合説(リン酸がCa²⁺と結びつき筋収縮を妨げる)
- 全身性:酸化ストレス説(活性酸素がミトコンドリアを傷つける)
- 全身性:炎症性サイトカイン説(免疫細胞由来の物質が脳に「疲労」信号を送る)
- 中枢性:セロトニン説(脳内セロトニン増加で「疲れ」の感覚が強まる)
- 中枢性:扁桃体説(「つらい」を処理する脳部位が運動限界を決める)
これら複数のメカニズムが組み合わさって「疲労」として感じられている、というのが現時点での理解です。
そもそも疲労は主観的な感覚なので、血液検査で一発で測れるようなものではありません。だから「この物質を入れれば完璧に疲労が取れる」サプリは、科学的には存在しません。
⚠️ 「◯◯で疲労物質が一発除去!」みたいな広告を見たら、だいたい盛ってます。
2. 疲労を2つに分けて考えると、サッカーの疲労が見えてくる
単一物質の特定はできていませんが、疲労を「末梢性(筋肉)」と「中枢性(脳)」の2つの現象として分けて扱うのは、今でも有用な枠組みです。
そしてサッカーは、この両方が同時にガッツリくるスポーツなんですよね。
末梢性疲労 ― 筋肉で起きている疲れ
- エネルギー源(ATP・グリコーゲン)の枯渇
- 代謝産物の蓄積(K+、無機リン酸など)で筋収縮効率が落ちる
- 筋繊維の微細損傷と炎症 → いわゆる遅発性筋肉痛(DOMS)、24〜48時間後にピーク
サッカーでの特徴:10km走りながら、スプリントやジャンプ、ボールを蹴る(キック動作)、ターン、急加速・急減速を何度も繰り返す。しかもコンタクトプレーで筋繊維のダメージも入る。純粋な長距離走より筋損傷が大きいのがサッカーの特徴です。
中枢性疲労 ― 脳で起きている疲れ
- 脳内のセロトニンが増えて「疲れた」という感覚が強まる
- 順天堂大の研究では、扁桃体中心核が「きつい」「つらい」を処理して運動限界を決めているとされる
- 判断力・注意力・モチベーションが落ちる
サッカーでの特徴:試合中、選手も審判も常に認知タスクを並行している。
選手なら:
- ボールの位置、味方・相手の位置
- スペースの読み
- パスコースの判断
- マーク、プレスの連動
- ポジショニング
審判なら:
- オフサイドラインの監視
- ファウルの有無の判定
- 選手間の感情コントロール
- カードを出すかの判断
この認知負荷が、走ることに上乗せされる。だから脳疲労(中枢性疲労)が想像以上に溜まります。
3. サッカーの後半30分に起きる「みんな失速」現象
ここから本題です。
走行距離は後半になるほど明確に落ちる
サッカーの1試合あたりの走行距離は、プロで平均約10km。多い選手で12〜13km、トップレベルでは14km台を記録する選手もいます。Jリーグ2022シーズンのチーム平均は1人あたり約10.3km(J1全体)。
これだけ走れば、後半になれば走行距離もスプリント回数も落ちるのは必然です。でも「走れなくなる」のは、脚の筋肉だけの問題じゃない。
「脚はまだ動くのに動けない」現象
僕自身も経験的に強く感じますが、サッカーの後半30分以降って、こういう現象が起きます:
- 脚は動くはずなのに、スプリントしようと思わない
- 判断が遅れる、雑になる
- プレーの選択肢が見えなくなる
これ、末梢性疲労じゃなくて中枢性疲労のサインです。脳が「もう無理」と判断して、運動出力にブレーキをかけている状態。
扁桃体中心核の研究(順天堂大)が示すように、「きつい」「つらい」を感じる脳部位が、運動限界を決めている。つまり脚の筋肉が物理的に限界に達する前に、脳が先にブレーキを踏むわけです。
判断ミスも「後半30分以降」に集中する
選手のパスミス、判断の遅れ、審判の判定ブレ、どれも後半30分以降に頻度が上がるのは偶然じゃなくて、中枢性疲労の典型的な症状です。
走力だけじゃなく判断力が落ちるのが、サッカーの後半の怖さ。
4. サッカーで特に気をつけたい3つの疲労シーン
① 後半30分以降のエネルギー切れ&判断低下
血糖値が下がると、脳のパフォーマンスがまず落ちます。判断ミス、パスミス、判定ブレ、全部これ。ハーフタイムの補給が甘いと、ラスト15分が地獄になります。
② 足がつる(筋痙攣・EAMC)
医学用語だと運動誘発性筋痙攣(Exercise-Associated Muscle Cramp)。これも原因が完全には解明されていなくて、有力なのは2説:
- 電解質・水分説:ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムのバランスが崩れて神経伝達がおかしくなる。特にマグネシウムは筋肉を弛緩させる側の電解質で、不足すると筋肉が過剰収縮(=つる)しやすくなる
- 神経筋制御説:筋疲労で腱紡錘(縮みすぎを防ぐセンサー)の働きが鈍り、筋肉が暴走する
1回やるとその試合はもうまともに走れません。予防が9割です。
③ 翌日以降に残る疲労と、連戦でのパフォーマンス低下
筋損傷マーカーのCK(クレアチンキナーゼ)やLDH(乳酸脱水素酵素)は運動後24〜48時間がピーク。ここをどうケアするかで、翌週末の動きが変わります。
5. 対策の基本:BCAAとクエン酸はエビデンスがある
疲労の根本メカニズムは未解明ですが、特定の栄養素の摂取が、筋損傷マーカーや疲労感を軽減するという研究は複数あります。サッカー界で広く使われているのも、これらの成分を中心にしたサプリです。
BCAA(分岐鎖アミノ酸)
バリン・ロイシン・イソロイシンの3種類の必須アミノ酸。
- 運動中に筋肉のエネルギー源として直接利用される
- 脳内でセロトニン生成を抑える働きがある → 中枢性疲労の軽減に寄与する可能性
- 2024年のメタ解析(Sports Medicine Open誌)では、筋損傷マーカーと筋肉痛の有意な軽減が確認されている
大塚製薬のアミノバリュー公式でも、サッカーについて同様のことが明記されています。「プレー開始前から十分な水分とエネルギー補給が不可欠。運動30分前にBCAAを摂ることで血中濃度がピークに達し、パフォーマンスの低下を軽減できる」という内容です。
クエン酸
- エネルギー代謝(クエン酸回路)の中心物質
- BCAAと同時摂取でCK値上昇が抑えられるという報告あり
摂取タイミング
運動30分前〜運動中〜運動直後が黄金。アミノ酸は約30分で吸収されるので、試合前にシュッと入れておくと運動中に効いてきます。
味の素は1995年にアミノバイタル プロを発売してから、日本のスポーツ栄養分野をリードしてきたブランドです。2003年からはJOCオフィシャルパートナーとして、日本代表選手団の栄養サポートも続けています。つまり、トップアスリートが実際に使い続けている実績がある製品群ということです。
例えば、僕が試合前に使っているのはこれです(BCAA + 他のアミノ酸配合の上位グレード)。
BCAAに加えてグルタミン、アルギニンも入ってる上位グレード。30本入り箱で買えば1本あたり100円台に収まるので、継続しやすい。
6. まとめ
- 疲労の正体は、実は科学的にまだ完全には解明されていない
- でも「末梢性(筋肉)」と「中枢性(脳)」という2つの枠組みで整理すれば対策は打てる
- サッカーは走る+判断するのダブル負荷で、選手も審判も中枢性疲労が大きい
- 後半30分以降、脚より先に脳が限界を迎えるのは中枢性疲労のサイン
- 対策の基本はBCAA + クエン酸。これだけは明確なエビデンスあり
「疲労の正体は何か」を知ってるかどうかで、対策の納得感が全然違います。
よくある「疲労=乳酸、これさえ除去すればOK」という古い知識のままだと、買うべきでないサプリに金を使ったり、根拠の薄いケアを続けたりしがち。
サッカーのパフォーマンスは、「敵(疲労)を正しく知る」ところから差がつきます。
参考にした論文・情報源
- Nielsen OB et al. (2001) 細胞外カリウムと筋疲労
- Pedersen TH et al. (2004) 塩化物イオン透過性と筋疲労
- Sports Medicine Open (2024) BCAA摂取と筋損傷マーカーのメタ解析
- 順天堂大学 扁桃体中心核と中枢性疲労の研究 (2022)
- Schwellnus MP (2009) 運動誘発性筋痙攣の原因 (Br J Sports Med)
- 味の素株式会社 アミノバイタル ブランドサイト / 開発ストーリー
- 大塚製薬 アミノバリュー公式サイト「サッカー」ページ
- Jリーグ公式 走行距離データ
- 東洋経済オンライン「W杯走行距離ランキング」2018
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では、良いサッカーを。

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