アドバンテージは戻せる?現役審判が解説する基本運用|サッカー競技規則

「今の完全にファウルだったじゃん!なんで流したの?」

ファウルがあったのに主審が笛を吹かず、そのまま攻撃が続いて結局相手にボールを取られた——こんな時、ベンチから必ず飛んでくる声です。

でも、実はこのルール、多くの人が誤解しています。アドバンテージは「一度流したら終わり」ではないんです。競技規則の付録には、はっきりとこう書かれています。

「予期したアドバンテージがそのとき、または数秒以内に実現しなかった場合、その反則を罰する」

つまり、主審には数秒間の猶予の中で反則の位置まで戻す権限があるのです。

この記事では、現役の2級審判員が、競技規則をベースにアドバンテージの基本運用を解説します。

この記事を書いた人
高校教員 × JFA公認2級審判員 × C級コーチ。神奈川県を中心に年間数十試合を担当。Instagram「サッカー審判のリョウスケ」(フォロワー2,500人超)で審判向けの実践情報を発信中。
目次

アドバンテージとは

競技規則の付録には、こう明記されています。

「反則があり、反則を行っていないチームがアドバンテージによって利益を受けそうなときは、プレーを継続させる」

つまり、ファウルが起きても、反則を受けた側のチームに有利な状況が続いている時に、主審が笛を吹かずにプレーを流す判断のことです。

「流したら終わり」ではない、戻せる

ここが一番の誤解ポイントです。

多くの人(選手・保護者・ベンチ)は、「主審が流した=その反則はなかったことになった」と思っています。

でも、実際はそうではありません。主審がアドバンテージのサインを示した後、数秒以内に利益が発生しなければ、笛を吹いてファウルに戻せるのです。

つまり、アドバンテージは「様子を見る」運用に近い。数秒待って、攻撃側に明確な利益があれば継続、なければ戻す。これが競技規則が想定している運用です。

「数秒以内」は公式の文言

秒数について、実際の試合では「2〜3秒」などと言われることもありますが、競技規則の公式文言は「数秒以内」です。

機械的な秒数管理ではなく、「利益が実現したかどうか」を中心に判断するのが正しい運用です。

アドバンテージのシグナルは2種類

主審が使うアドバンテージのサインには、2つのバリエーションがあります。

  • アドバンテージ(1):片手を前方に出す
  • アドバンテージ(2):両手を前方に出す

どちらを使っても同じ意味で、状況や主審の癖によって使い分けられます。そして、このシグナルと同時に主審は「プレーオン!」と大きな声で発声します。手のサインと声の両方で、副審・選手・ベンチ・観客全員に「今ファウルがあったけれど、流している」という意思を示すのがポイントです。

判断の土台になる「4つの考慮事項」

アドバンテージを「流す/吹く」、そして「戻す/継続する」の判断について、競技規則の付録では4つの考慮事項が明記されています。

①反則の重大さ

退場に値する重大な反則の場合、原則としてプレーを止めて退場させる必要があります。例外は、反則直後に明確な得点機会がある場合のみ。著しく不正なプレー・乱暴な行為・2つ目の警告となる反則にアドバンテージは原則適用すべきではない、と明記されています。

②反則が行われた場所

相手ゴールに近ければ近いほど、アドバンテージはより効果的になります。自陣深い位置でのファウルを流しても得点機会には繋がりにくいですが、相手PA近辺で流せば決定機が生まれる可能性が高い。

③すばやく、大きなチャンスとなる攻撃ができる機会があるか

これがアドバンテージの**最大のポイント**です。ファウルを流すかどうかは、次の2つを見ます。

  • ファウルを受けた選手がプレーを続行できる
  • ファウルを受けた選手は続行できないが、チームとして有利な状態がある

このどちらかが成立してれば、流す価値がある。

④試合の状況(雰囲気)

意外と重要なのが、試合の雰囲気という要素です。荒れ始めている試合、感情的になっている試合では、アドバンテージで流すことで余計な接触や報復行為が起きる可能性があります。あえて流さずに笛を吹くことで、試合のコントロールを優先する判断もあります。

アドバンテージは「FKを流すか戻すか」だけの話じゃない

ここまでの話は、ファウルを流すか戻すかの判断についてです。

ただし、アドバンテージの運用にはもう一つ、カード処置という重要な側面があります。

ファウルの種類によっては、流したことで、

  • 退場が警告に格下げされる(DOGSO)
  • そもそも警告がなくなる(SPA)
  • 通常の警告は次にプレーが止まった時に提示

といった処理が走ります。これを知らないと、出すべきカードを出さずに試合を終えたり、逆にベンチから「なんでカード出さないんですか?」と詰められたりします。

また、アドバンテージは第12条のファウル以外にも、第13条のクイックFK、第3条の競技者数、第11条のオフサイドなど、競技規則のさまざまな場面で登場する考え方です。

これらのカード処置の特例(DOGSO・SPA)第12条以外の条文への適用、そして現役審判の実戦運用と実体験については、有料note記事で詳しく解説しています。

📝 続きはnoteで

「アドバンテージは戻せる|現役2級審判員の判定ノート」

本記事では基本運用を解説しましたが、有料note記事ではさらに踏み込んで、

  • DOGSOで退場が警告に格下げされる仕組み
  • SPAで警告すら出ない条件
  • クイックFK・オフサイドアドバンテージの実務
  • 現役審判の体験談(戻して正解だった試合・流して大成功した試合・失敗談)
  • カード対象選手を覚えておく難しさと対処法
  • 自分のレフェリングが良くない時に出るサイン

などを15,000字以上にわたって解説しています。

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まとめ

  1. アドバンテージは「流したら終わり」ではない。競技規則の公式文言は「数秒以内に実現しなかった場合は戻す」
  2. 判断の土台は競技規則付録の4要素:反則の重大さ/場所/攻撃のチャンス/試合の雰囲気
  3. シグナルは片手・両手の2種類。「プレーオン!」の声と組み合わせる
  4. カード処置の特例(DOGSO・SPA)、第12条以外への適用などはnote記事で詳説

アドバンテージは、審判員にとって最もセンスが問われる運用の一つです。機械的に「流す」「吹く」を決めるのではなく、プレーの流れ、利益の有無、カード処置まで含めて総合判断する。競技規則の正確な理解があれば、試合全体のクオリティがぐっと上がります。

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